History大会の歴史(第31回~第35回)
第31回 2017年(平成29年)8月27日
2020年東京オリンピックの代表選考競技会「マラソングランドチャンピオンシップシリーズ」と2018年アジア競技大会の代表選考を兼ねて開催
31回目を迎え約2万人がエントリーした北海道マラソン2017は、2020年東京五輪代表選考のマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)シリーズ、2018年にジャカルタで開催のアジア競技大会、同年ロンドンで開催される視覚障がい者マラソン国際大会のワールドパラアスレチックスマラソンワールドカップという3つの選考競技会を兼ねて開催した。MGCシリーズは初戦の北海道マラソンをはじめ国内8大会で行い、当大会が唯一、男女が選考対象になっている。
スタート時の天候は曇り。気温24.8度、湿度47%、気温は昨年より7度近く高かったが湿度は低く、風も穏やかなコンディションの中、今年で6回目となったさっぽろテレビ塔電光時計によるカウントダウンで午前9時に約1万9,000人が一斉にスタートした。
男子は4人の先頭集団から40km付近で村澤明伸(日清食品)がスパートし、2位の吉村大輝(旭化成)らを振り切り2時間14分48秒で優勝。3位は福田穣(西鉄)。女子は前田穂南(天満屋)が33kmすぎでトップの野上恵子(十八銀行)を追い抜き、そのまま逃げ切って2時間28分48秒で優勝した。2位に野上、3位は田中華絵(第一生命グループ)。
ともにマラソン初優勝の村澤と前田は、北海道マラソンのMGCシリーズ設定記録・順位の条件を満たして2019年9月以降に開催予定のマラソングランドチャンピオンシップの出場権を獲得。MGCファイナリスト第1号となった。また、大会当日満25歳以下で今回を含めフルマラソンの出場が3回以下の選手が対象の新人賞は、男子がメラク・アベラ(黒崎播磨)、女子は優勝の前田が受賞。
フルマラソンは1万7,651人がエントリーして1万5,686人が出走し、80.7%の1万2,659人が完走。11.5kmのファンランは3,628人がエントリーし3,276人が出走、94.5%の3,096人が完走した。完走者数はともに過去最多となった。
今大会初の試みとして、日本ブラインドマラソン協会の強化指定選手13人らが出場した視覚障がいランナーに向けた完走証の点字翻訳、聴覚障がいランナーに対する手話ボランティア、ここ数年で急増している外国人ランナーに対応する英語・中国語・韓国語の多言語ボランティアを配置し、各ボランティアが大会前の選手受け付けからレース当日まで活躍した。また、昨年の30回記念大会企画として行った179市町村参加企画を継続実施。道内全179市町村から各1名がエントリーし、首長などが各自治体名のナンバーカードで出場した。
3回目の合同開催となった「はまなす車いすマラソン」は、ハーフマラソンと2km、1kmのショートレースを実施。ハーフはリオデジャネイロパラリンピック代表の山本浩之(福岡市)、副島正純(ソシオSOEJIMA)、洞ノ上浩太(ヤフー)、久保恒造(日立ソリューションズ)ら34人が出場し、男子はハーフマラソン日本記録保持者の山本が44分22秒で2年ぶり2度目の優勝を果たした。女子は初出場の喜納翼(タイヤランド沖縄)が52分23秒で制した。ショートレースは2kmに36人、1kmに24人の計60人が出場。沿道から温かい声援を受けて全員完走し、フィニッシュ直後で完走メダルを手にした。
第32回 2018年(平成30年)8月26日
東京2020オリンピックの代表選考競技会「マラソングランドチャンピオンシップシリーズ」と、ドーハ2019世界陸上競技選手権大会の代表選考競技会を兼ねて開催
32回目を迎えた北海道マラソン2018には、フルマラソンとファンランを合わせて約2万人がエントリー。昨年に引き続き、今年も東京2020オリンピックの代表選手選考の場となる「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)」シリーズに位置づけられたほか、2019年にドーハで開催される世界陸上競技選手権大会の代表選手選考競技会を兼ねての開催となった。
スタート時の天候は晴れ。気温25.5度、湿度71%と、湿度はやや高かったものの風は穏やかで、ランナーにとっては走りやすいコンディションとなった。北海道マラソンの名物となった、さっぽろテレビ塔電光時計によるカウントダウンで、およそ1万9,000人が午前9時に大通公園を一斉スタートした。カウントダウンは今年で7回目。
男子は4人の先頭集団から37kmすぎに岡本直己(中国電力)が飛び出し、2位のポール・クイラ(コニカミノルタ)らを振り切って、2時間11分29秒で初優勝。3位は谷川智浩(コニカミノルタ)。
女子は、2016年リオデジャネイロ五輪長距離代表の鈴木亜由子(日本郵政グループ)が、33kmすぎにトップの谷本観月(天満屋)を抜き、そのまま逃げ切って2時間28分32秒でフィニッシュ。初マラソンで初優勝した。2位は前田彩里(ダイハツ)で、谷本は3位だった。
岡本と鈴木は共に来年9月に開催されるMGCへの出場権を獲得。このほか、男子3位の谷川、4位の大塚祥平(九電工)、5位の中本健太郎(安川電機)も規定タイムを上回り、権利を手にした。新人賞には、男子4位の大塚と女子3位の谷本が選ばれた。
フルマラソンは、過去最多の1万8,012人がエントリー。そのうち1万5,980人が出走し、出走数の81.2%にあたる1万2,971人が完走した。
ファンランは、昨年までのフィニッシュ地点が使えなくなり、フルマラソンと同じ大通西8丁目をゴールとしたことで、距離が12.1kmに延長。3,168人がエントリーし、2,843人が出走。出走数の90.6%となる2,577人が完走した。
今年新設した視覚障がい者の部では、男子は堀越信司(NTT西日本)が2時間31分22秒、女子は16年リオパラリンピック銀メダリストの道下美里(三井住友海上)が3時間8分43秒で優勝。日本ブラインドマラソン協会から強化指定選手18人が出場するなど、全国的にも珍しい夏のフルマラソンに注目が集まっている。
また、ゲストランナーとして92年アルベールビル五輪スピードスケート銅メダリストの橋本聖子さんをはじめとする北海道出身のオリンピアンや、女子1万メートルの日本記録保持者で三井住友海上女子陸上競技部のプレーイングアドバイザーを務める渋井陽子さん、第一生命グループ女子陸上競技部アドバイザーの尾崎好美さんらが出場し、大会を盛り上げた。
4回目の合同開催となった「はまなす車いすマラソン」は、ハーフマラソンと2km、1kmのショートレースを実施。ハーフには35人が、ショートレースには伴走者を含めて103人がエントリーした。
ハーフは北海道出身の久保恒造(日立ソリューションズ)が日本記録を上回る40分21秒で初優勝。1秒差で、2位の副島正純(ソシオSOEJIMA)が続いた。
出場1人の女子は、昨年優勝の喜納翼(タイヤランド沖縄)が昨年を上回る51分36秒でゴール。沿道からの声援を受けてハーフ出場選手は全員が完走した。また、ショートレースの完走者には1996年アトランタパラリンピック車いすマラソン銀メダリストの室塚一也さんから完走メダルを授与された。
第33回 2019年(令和元年)8月25日
東京2020パラリンピック視覚障がいマラソン代表推薦選手選考レース チャリティーランナーにはノーベル賞を受賞した山中伸弥教授も
33回目を迎えた北海道マラソン。今年もフルマラソンとファンラン合わせて約2万人の参加申し込みがあった。フルマラソンはエントリー開始から5日間で定員に到達。本大会の人気の高さを証明する結果となった。今年の大会は「東京2020パラリンピック視覚障がいマラソン代表推薦選手選考大会」を兼ねての開催となり、パラスポーツの分野でも大きな意味を持つ大会になった。
スタート時の天候は雨。気温は18.7℃で、ランナーにとっては走りやすいコンディション。今年で8回目となるさっぽろテレビ塔電光時計のカウントダウンを見ながら、午前9時の号砲とともに、約19,000人のランナーが札幌の街中へと駆け出した。
フルマラソンにエントリーした18,011人のうち15,932人が出走し、過去最多の13,457人が完走した。一方ファンランのエントリー数は3,244人。2,907人が出走し、出走者の95.6%あたる2,780人が完走した。
男子はスタート直後から30人ほどの先頭集団を形成。25kmすぎの折り返し地点でギザエ・マイケル(スズキ浜松AC)がスパートをかけて集団を飛び出しリードを保ったが、30km付近から松本稜(トヨタ自動車)が猛追。35kmすぎでギザエを捉え、36kmすぎで引き離すと首位に立った。松本はそのまま後続を振り切って2時間12分57秒でフィニッシュ。最終盤で追い上げた住田優範(愛知製鋼)が2位、田中孝貴(カネボウ)が3位に入った。失速したギザエは4位。
女子は、中盤までは7人が先頭集団を形成。スタートから30kmまでの先頭は吉田香澄(ニトリ)。その後に猪原千佳(肥後銀行)や和久夢来(みらい、ユニバーサルエンターテインメント)、岡田唯(大塚製薬)ら6人が順位を入れ替えながら続いた。30kmすぎでペースが落ちてきた吉田を和久と岡田の2人が捉え、和久がトップに。37km付近で和久が岡田を一気に突き放して独走。2位の岡田に1分32秒差をつけて、2時間33分44秒でフィニッシュした。3位は吉田。
視覚障がい者の部男子は、T13クラスの高井俊治(D2C)がアジア記録となる2時間30分54秒で優勝。高井は視覚障がい選手の中では比較的軽度な弱視で、より重度のT11とT12が出場する東京パラリンピックのマラソンには出場できないため、東京パラの代表推薦選手には2位の熊谷豊(三井住友海上)が内定した。
視覚障がい者の部女子は、2018年大会の優勝者で世界記録保持者でもある道下美里(三井住友海上)が2位以下に5分以上の差をつける圧巻のレース運びで2連覇。目標に掲げた3時間10分を切る「3時間9分57秒」でフィニッシュ。あらためて世間に「強い道下」を印象づけることとなった。
2位は64歳の西島美保子(福井市陸協)。道下は既にパラリンピック代表推薦選手の資格を得ているため、西島が推薦枠入りを決めた。
今年、チャリティーエントリーに「被災地支援特別枠」を新設。寄付先を北海道胆振東部地震の被災地に指定できる仕組みで、10万円以上の寄付者に先頭ブロックからの出走や専用の休憩テント、被災地の産品の贈呈などの特典を用意した。チャリティーランナー51人中、先頭ブロックからの出走権を得たのは、京都大学iPS細胞研究所所長の山中伸弥教授を含む5人。山中教授は完走後、自己ベストを下回るタイムでフィニッシュしたことに触れ、「マラソンも医療の研究も険しい道のりを行くことは同じ。来年はリベンジを果たしたい」と再挑戦への意欲をにじませた。
記念すべき30回目を迎えた「はまなす車いすマラソン」との合同開催は、今回で5回目。ハーフマラソンには33人が、2kmと1kmのショートレースには伴走者を含めて122人がエントリーした。
ハーフ男子は、リオデジャネイロ・パラリンピック代表の洞ノ上(ほきのうえ)浩太(ヤフー)が3km付近でスパート。優勝経験のある山本浩之(無所属)と西田宗城(バカラパシフィック)らの追い上げを振り切り、45分24秒で5年ぶり5度目の優勝を果たした。出場1人の女子は見崎(みさき)真未(熊本県陸協)が1時間17分24秒で完走。降りしきる雨の中、沿道からの声援を受けて、ハーフ出走者全員が完走した。
ショートレースには北海道の鈴木直道知事が併走して大会を盛り上げたほか、ソチ・パラリンピックの金メダリストであるチェアスキーヤー・狩野亮(あきら)さんがゴールで出迎え、全員に完走メダルを渡した。
2019年9月15日に開催された、東京2020オリンピックのマラソン代表選手選考会「マラソングランドチャンピオンシップ」(MGC)で、2017年の北海道マラソン女子の部で優勝した前田穂南選手(天満屋)と、2018年大会を制した鈴木亜由子選手(日本郵政グループ)がワンツーフィニッシュ。北海道マラソンでMGC出場権を得た2人が揃って女子五輪代表に内定した。
第34回 2022年(令和4年)8月28日
「JMCシリーズ」男女ともG1に加盟、「ブダペスト2023世界陸上競技選手権大会日本代表選手選考競技会」、「MGCチャレンジ」として3年ぶりの開催
34回目を迎えた北海道マラソンは、東京2020オリンピックマラソン・競歩が札幌に移転し、さらに新型コロナウイルス感染症の影響による1年間の延期を経て、3年ぶりの開催となった。
コースは一部オリンピックコースを取り入れる形で再設計した。コース変更に伴いファンランを廃止。その代わりにフルマラソンの募集を3,000人増やし定員20,000人とした。多くのファンにオリンピックコースを楽しんでいただきたい思いから、制限時間を1時間延長し、6時間が実現した。
本大会は「ジャパンマラソンチャンピオンシップ(JMC)シリーズ」「ブダペスト2023世界陸上競技選手権大会日本代表選手選考競技会」「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)チャレンジ」を兼ねて行われた。2023年秋に開催されるMGC出場権を狙うために国内エリート競技者が一堂に集まる豪華なメンバーとなった。
フルマラソンスタート時の天候は曇り。気温は24.5度、湿度60%でランナーにとっては走りやすいコンディションとなった。さっぽろテレビ塔電光時計のカウントダウンを見ながら、午前8時30分の号砲とともにランナーが一斉に札幌の街中へと駆け出した。
21,012人のエントリー数に対して18,290人が出走(87.0%)、完走者数は16,515人(90.3%)だった。
男子は20kmまでは約30人の大集団だったが、22km地点で先頭集団から抜け出したルカムセンビ(東京国際大学)がそのまま逃げ切り2時間10分49秒で優勝。2位は柏優吾(東洋大学)2時間11分41秒。3位には青木優(カネボウ)が入った。4位松本稜(トヨタ自動車)、5位山口武(西鉄)までの日本人4選手がMGC進出条件を満たし出場権を獲得した。また、現役大学生のワン・ツーフィニッシュは大会史上初。
女子は山口遥(AC KITA)が2時間29分52秒で初優勝。レース前半は松下菜摘(天満屋)がペースメーカーより前を走る展開。青木奈波(岩谷産業)、岡田唯(大塚製薬)、山口が続いた。山口は中盤以降に徐々に順位を上げると25km過ぎの折り返しのあと首位に並び、30km過ぎに単独首位に立ちそのままフィニッシュ。実業団に所属しない市民ランナーが優勝を飾り、女子で唯一MGC出場権を獲得した。2位は青木、3位岡田、4位は来年3月で廃部となる北海道唯一の実業団ホクレンの菊地優子が入った。
視覚障がい者男子の部は和田伸也(長瀬産業)が2時間29分50秒で優勝。同女子の部は東京2020パラリンピック女子マラソン金メダリストの道下美里(三井住友海上)が3時間7分23秒の大会新記録で貫録の3連覇を達成した。
第35回 2023年(令和5年)8月27日
「JMCシリーズ」男女ともG3に加盟。2019大会ぶりに海外参加者受け入れ。
大会公式アプリ立ち上げ・ウェーブスタート採用など、新たなことにもチャレンジ。
今年の北海道マラソンには20,343人がエントリーし、18,020人が出走。スタート時の天候は曇り、気温29.2℃、湿度78%。高温多湿がランナーを苦しめた。後半には気温は30℃を超え、豪雨と雷が鳴り響く中での大会となった。最終的には14,601人が完走。完走率は81%と前回より10%近く下がった。
男子はパトリック・マゼンゲ・ワンブィ(NTT西日本)が2時間20分54秒、女子は市民ランナーの澤畠朋美(さわはた~ず)が2時間38分18秒で、それぞれ初優勝。
男子はスタート直後、30人ほどの先頭集団を形成し、9km過ぎにワンブィを含む4人が抜けだした。ワンブィが26km過ぎで先頭に立つも、フィニッシュまであとわずかのところで転倒。100mほど後ろに2位の岩田拓海(JFEスチール)が迫ってくる中、最後の力を振り絞りフィニッシュテープを切った。
女子は終盤まで順位が入れ替わる展開が続いた。序盤から独走していた村尾綾香(ダイハツ)は18km地点で失速。中間地点でトップに躍り出た清田真央(スズキ)も粘れず、背後についていた池内彩乃(デンソー)が24km過ぎで抜き去った。後半からペースを上げた澤畠が36km地点で池内を追い抜き、そのまま引き離してフィニッシュした。
歴代優勝者では男子が下から2番目、女子は下から4番目のタイム。過酷なコンディションだったため、タイムが伸びなかった。男子2位は岩田、3位は細谷翔馬(ロジスティード)。東洋大の村上太一(北見緑陵高出)が5位に食い込んだ。女子2位は池内、3位は清田。
フルマラソンの視覚障がい者の部は、男子は高井俊治(三好市陸協)が2時間39分21秒で2019年以来2度目の優勝。女子は道下美里(三井住友海上)が3時間9分54秒でフィニッシュし、4大会連続で頂点に立った。